第八十一番 これだったのだ

 

 幼い頃から時々浮かんでいたイメージがある。白い服の綺麗な女性に抱かれている場面。女性は私を見下ろして穏やかに微笑んでいるのだ。視点からするとどうやら私は女性の腰くらいの背丈しかないようだった。

 その場面が何なのか、私にはよく分からない。女性の顔は母の顔とは違っていた。もしかしたら今の母は偽者で、イメージの女性は生き別れになった本物の母なのではないかと考えたこともある。だが私の顔立ちは性別の違いこそあれ、母の特徴を確かに受け継いでいるのだった。

 イメージは私が成長するごとに薄れていき、滅多に思い出すことはなくなっていた。それが、三十代も半ばになった今頃になってぶり返してきたのだった。仕事中や、一休みして煙草を喫っている時、ベッドに入って目を閉じた時などに唐突に、数秒間浮かんでは消える。

 イメージの中の女性は何も語りはしない。

「どうした、悩み事か」

 運転していた友人が尋ねた。

「いいや。これは多分、宿命みたいなもんだろうな」

 私は苦笑して答えた。土曜の昼。うまい蕎麦屋があるということで、友人と二人で食べに行く途中だった。

「どんな宿命だよ」

 友人が言った時、街を眺めていた私は人込みの中に白い服を着た女の姿を認めた。

 私の視線に気づいて女もこちらを見た。

 幼い頃からのイメージ、そのままの女性だった。イメージと違う点は、彼女が微笑しておらず、ちょっと驚いたような顔をしていることだ。

 まさか。実在したのか。これは運命なのか。私の乗った車は通り過ぎようとしている。私は彼女の姿を追って助手席の窓から身を乗り出した。

「おい危なっ」

 友人の叫び声。私は首筋に強い衝撃を感じた。視界が回っている。どうした。何が起こった。私の顔が地面に激突した。視界がグルグルと回る。通行人の悲鳴が聞こえる。

「うわわっ、首がっ」

 誰かの声で私は悟った。身を乗り出し過ぎたため電柱か何かにぶち当たり、私の首が切断されてしまったのだ。

 停止した私の前に、あの女性が立っていた。皆が悲鳴を上げて逃げる中、彼女は黙って手を差し伸べ、私の首を拾い上げた。視界が次第に暗くなっていく。

 私を両手で抱いて、彼女は、これまで幾度となく見た、あの穏やかな微笑を浮かべた。彼女の腕が温かい。

 そうか。これだったのだ。漸く長年の疑問が解けた。

 私は、こうなる筈だったのだ。

 最期の数秒間、私は幸せだった。

 

 

  第八十二番 ルーレット医師

 

 ルーレット医師の診療所に今日も患者がやってきた。ルーレット医師の診察は単純明快だ。大きなルーレットを回すだけ。

 ルーレットはカラカラ回り、針は「肺癌」を指して止まった。

「肺癌です」

「ああ、私は肺癌だったんだ」

 患者は診療報酬百万円を払って出ていった。そしてマンションの屋上から飛び降りて死んだ。

 次の患者が来た。ルーレット医師はルーレットを回し、針は「うつ病」を指して止まった。

「うつ病です」

「ああ、私はうつ病だったんだ」

 患者は診療報酬三百万円を払って出ていった。そして自宅で首を吊って死んだ。

 次の患者が来た。ルーレットの針は「たわし」を指して止まった。

「たわしです」

「ああ、私はたわしだったんだ」

 患者は診療報酬八百万円を払って出ていった。出てすぐ舌を噛んで死んだ。

 ルーレット医師の診療所の隣では、ダーツ医師が開業している。その更に隣では賽の目医師がやっている。

 三つの診療所は大繁盛していた。

 

 

  第八十三番 千人強盗

 

 下町の小さな駄菓子屋。店の名前は『みなごろし』。

 耳の遠い老婆が一人で店をやっていた。

 春の日の午後、店に千人の強盗が押し入った。

 強盗達は包丁片手に言った。「金を出せ」

 耳の遠い老婆はガンマニアだった。

 ショットガンで迎撃されて強盗の頭が吹っ飛んだ。店先に首なし死体が重なった。

 強盗は後から後から押し入った。耳の遠い老婆は容赦なく撃ち殺した。ショットガンの次はライフルだ。その次は対戦車ミサイルだ。

 小さな駄菓子屋の前に千の死体が山積みされた。山が崩れて駄菓子屋が潰れた。

 耳の遠い老婆は死刑を宣告されたが、義足に仕込まれたサブマシンガンで看守を撃ち殺して脱獄したという。

 

 

  第八十四番 向上

 

 曽根敬一が今日組み立てたラジオは五百三十九個だった。これまでの最高記録だ。

 八時間の勤務だから、一個を一分以内に組み立てた計算になる。なかなかこれは凄いことではないか。

 こんなに自分は上達したのだなと曽根はしみじみ思う。最初の頃は一日に百個組み立てるのがやっとだった。それが今は五倍以上だ。

 なにしろ、曽根がこのラジオ工場に就職してから、もう三十二年になるのだ。同じラジオを組み立て続けて三十二年。一生懸命に働いて三十二年。

 やっぱり生きてたら人間は成長するのだな。曽根はちょっとした満足感を抱えて帰宅した。独身で一人暮らしの彼はテレビでプロ野球を観ながらコンビニ弁当を食べ、ビールを飲んだ。

 組み立てたラジオは誰が使っているのだろう。あんな古い型のラジオ、誰も買わないかも知れないな。

 歯磨きをしていて鏡の自分を改めて見て、俺も老けたなと曽根は思った。

 その夜曽根は脳梗塞で死んだ。

 

 

  第八十五番 帝王

 

 彼は暗黒街の帝王だった。国内にある地下カジノと歓楽街、麻薬取引の七割を彼の組織が支配していた。帝王の座に就いて二十年、彼に逆らって消された者は五百名を超え、挨拶に来なかった市長の首をすげ替えたことも一度や二度ではない。来年の大統領選では彼の息のかかった候補を送り出す予定だった。対立候補の弱点を探り出して蹴落とす術も心得ている。

 帝王にとって、何も怖いものはなかった。

 帝王は、この世で出来ないことはないと思っていた。

 その昼、食事を持ってきた若い給仕が盆をひっくり返してしまった。服が食べ物で汚れ、帝王は怒りを覚えた。

「この馬鹿者」

 叱責で給仕は震え上がる筈だった。土下座して許しを乞う筈だった。

 だが給仕の反応は違っていた。彼は冷たい顔をしてこう言ったのだ。

「馬鹿はお前だよ」

 帝王は聞き間違ったかと思った。この自分に向かってこんなことを言う者がいる筈はないのだ。

「何。今、何と言った」

「ばーか」

 給仕ははっきりとそれを発音した。

 何なんだ。こいつは何だ。帝王の中で怒りと混乱が巡っていた。丁度部屋にボディガードの一人が現れたので、帝王は彼に命じた。

「おい、こいつを殺せ」

 十三年の間帝王を守ってきたボディガードは言った。

「ばーか」

 帝王は絶句した。自分は帝王だぞ。こいつらは狂ってしまったのか。もう一人のボディガードも来たので帝王は叫んだ。

「おい、どうなってる。こいつらがこの俺を馬鹿呼ばわりするぞ」

「ばーか」

 そのボディガードも言った。

 帝王の目に涙が滲み始めていた。幹部がやってきた。最も信頼している忠実な右腕に帝王は喋りかけようとした。だがその前に側近は告げた。

「ばーか」

 自分を支えていた世界が崩れ落ちていく不気味な感触を帝王は味わっていた。馬鹿な。俺は帝王の筈だ。指一本で人を消せる男の筈だ。帝王は恐慌状態になった。

 その時最愛の妻が姿を見せた。ああ、彼女なら分かってくれる。彼女なら、俺の存在を認めてくれる筈だ。

 そして妻は言った。

「ばーか」

 帝王は発狂した。たった五分の出来事だった。

 

 

  第八十六番 マゾヒスティック・イメージ

 

 最初に思い描いていたのは自分の脳天に斧が叩き込まれる感覚だったと思う。怖いとか痛いとかより、脳味噌に斧がめり込んですっきりして気持ちがいいのではないかとなんとなく考えていた。

 そのイメージが続いたのは二、三ヶ月だったろうか。やがてナイフで顔を切られるイメージに変わった。正中線を縦に切り裂かれ、鼻の高さで水平に切られる。ああ、気持ちいいだろうな。暫くするとまた嗜好が変わって、今度は額にナイフが柄まで突き刺さる感覚になった。頭に風穴が開いてすっきりするのではないかと思ったりした。鎌で首を切られる感覚になったこともあった。フレディの爪のようなもので顔に四筋の傷をつけられる感覚もあった。耳を削ぎ落とされるのもいい。

 私が何故これらの感覚を好むのか、理由はなんとなく分かるような気がする。多分私はこの窮屈で単調でぬるま湯のような気怠い生活に飽き飽きしていて、どうにかしてぶち壊したいと思っているのだ。その衝動が外へではなく、自分自身に向いているのだろう。

 そして私は窮屈で単調でぬるま湯のような気怠い生活を続けていた。好きでもない仕事をするために鮨詰めの列車に乗り込むのだ。

 駅へと歩いていた時、前方から悲鳴が聞こえてきた。人々が逃げ惑っている。どうしたのだろう。

 日本刀を振り回して人々を追いかけている男がいた。ヤク中だろうか、目がイッてしまっている。二人ほどが死体となって転がり、腕から血を流して呻いている女もいた。

 通り魔だ。

 丁度いい。折角の機会じゃないか。私は奮い立った。

 ずっと思い描いていた感覚を、体感してみようじゃないか。

 周りに人がいなくなっても男は日本刀を振り回し続けていた。私は男に近づいていく。誰かが「危ないぞ」と叫んだ。

 男は私に気づくと雄叫びを上げながら日本刀を振り下ろしてきた。私は精神集中して刀の軌道を見極め、刃先の通る場所に自分の顔を置いた。

 刃が私の顔を縦に裂いていく。切先が骨を削るゴリリという感触があった。

 想像していたより痛かった。そして熱い。寒い。ヒリつく。

 でも、気持ちいい。

「さあ、来なさい」

 私は男に告げた。

 男は面食らったようだが、気を取り直して日本刀を横に払った。胸の高さだ。しかも少し斜めだ。私は膝を曲げ、首を少しかしげて刃の軌道に合わせた。刀が私の頬と鼻を水平に切っていく。

 ああ、なんて気持ちいいんだ。気怠い日常にピリッと程良い刺激が走る。生きる気力が湧いてきた。

 男は躍起になって第三撃に来た。今度は耳にしよう。私は刀の軌道に左耳を合わせ、正確に削ぎ落とした。流れた血がシャツを濡らしてちょっと嫌だったが、切られた耳の何とも言えない感覚が素晴らしい。

 男は戸惑い顔で、刀を振る手を止めていた。こんな半端なところでやめてもらっては困る。

「さあ、次は右耳だ。どうぞどうぞ、遠慮なく」

 男は意味不明の声を上げて刀を横に振ってきた。私はしゃがんで頭を左に寝かせ右耳を切らせた。我ながら神業だと思う。知らなかった。自分はこんなにも快楽に貪欲な人間だったのか。

「さあ、次だ」

 私が促すと、男は日本刀を放り捨てて逃げ出してしまった。困った。周囲には人々が遠巻きに見守っている。

「誰か、誰かお願いします。切って下さい」

 私が声をかけると皆逃げてしまった。参ったな。こうなれば自分でやるしかないか。

 柄を下にして日本刀を地面に立て、切先を額に向けると、自分の頭を思いきり振り下ろした。ゴリョサクッと鋼が骨を破り脳味噌に突き刺さる感触。

 ああ、気持ちいい……

 

 

  第八十七番 失われゆく時

 

 時計は不思議だ。

 時刻を確認するためのものでありながら、じっと見ているだけで時が経ってしまう。不確定性原理では知るという行為自体が対象の変化を来たすというが、それに似ているような気がする。時刻を確かめた瞬間に既にそれは正しい時刻ではないのだ。そして自分の知識を正しい時刻に修正しようとした瞬間にまた正しくなくなってしまう。そうなると永遠に終わらないではないか。

 秒針がカチカチ段階的に動く場合はまだましな方だ。秒針がなめらかに動くタイプなどは何処で時間を区切ればいいのか分からないうちにやっぱり時間が経ってしまう。

 時計とは恐ろしい道具だ。

 とか言ってるうちに三分が経ってしまった。なんということだ。時を見ているだけで時が経ってしまった。三分といえば一時間の二十分の一で、一日の四百八十分の一じゃないか。ということはこれを四百八十回繰り返していれば一日が経ってしまうということか。時を眺めているだけで一日が経ってしまう。凄いことだ。

 とか言ってるうちに十分が経ってしまった。なんということだ。十分といえば一日の百四十四分の一じゃないか。眠っている時間を入れなければ百分の一くらいだぞ。

 とか言ってるうちに三十分が経ってしまった。なんと、一日の四十八分の一だ。時計を見ているだけでこんなにあっさり時間が経ってしまった。この調子だと簡単に一日が経ってしまうぞ。一日が簡単に経つということは一週間だって過ぎてしまうかも知れない。とすると一年だって。恐ろしい。時を見ているだけで時が過ぎる。人生を生きないといけないのに、その人生の区切りを確認するだけで人生が過ぎてしまう。

 とか言ってるうちに一日経ってしまった。このままでは時計を見ているだけで人生が終わってしまうぞ。時計から目を逸らさなければ。ああ、でもこのなめらかに動く秒針が私に区切りを与えてくれないのだ。

 とか言ってるうちに三日経ってしまった。やばい。やばいぞ。時計を見るのをやめないと。でもそもそも一体何時間損したのだろう。そう思うと気になって結局時計を確認してしまう。

 とか言ってるうちに本当に一週間経ってしまった。私の人生の残り時間はどれだけだろう。音もなく、人生が過ぎていく。私は人生の進みを具体的な形で実感しているのだ。おお、時とは恐ろしい。人生とは……。

 時計を見ているだけで、人生が終わった。

 

 

  第八十八番 蝉

 

 私は廃墟の町を散策していた。四十三年前の第三次世界大戦で核攻撃を受けて滅んだ町だ。今も住む者はなく、たまに猫と鼠が追いかけっこをしているだけだ。

 と、ゴゾリと音がしたのでそちらを見ると、瓦礫の山が崩れて大きな穴が開き、中から大きな生き物が飛び出してきた。人の形はしているが服はボロボロで、顔も手足も真っ黒に汚れている。そいつのギラギラ光る目が私を発見した。「うあうあうあう」とか「いえばああああ」とか叫びながら私に飛びかかってきたのだ。

 私は驚いて発砲した。二発の炸裂弾を食らってそいつの胸に風穴が開き頭が吹っ飛んだ。そいつは倒れて手足を暫く痙攣させた後、動かなくなった。

 何だったのだろう、これは。私はそいつの出てきた穴を覗いてみた。瓦礫を掘った細いトンネルになっていて、地下から淡い明かりが洩れている。私は穴を這って奥へ進んでみた。

 三、四十メートルくらい下りたろうか。そこはちょっとした居住空間になっていた。壁や床はひどく汚れている。明かりはダイナモ発電機に繋がっていた。手回しで発電する小型のものだ。隣の部屋には大量の水と食料が貯蔵されていた。半ばくらいは空のようだ。

 机の上に手垢で汚れた日記があった。めくってみると昨日の記載があった。

 

 そろそろ地上に出られそうな気がする。シェルターを出ることを決心してから四十一年かけて、漸くここまで掘ることが出来た。出口が塞がってしまい外界の様子も分からず、生きているうちに再び太陽を拝むのは無理かと思っていたが、もしかするとなんとかなるかも知れない。もし世界がまだ存在していて人類が生き残っていたら、私は早く彼らと会って話がしたいものだ。この四十三年、狭いシェルターで独りきりで過ごしてきた。人恋しくてたまらない。喋る機会がなかったので私の声帯はおかしくなっているようだが、なんとか話がしたい。それと美味しいものを食べたい。ずっと乾パンと水だけで生きてきた。死ぬまでにどうか、温かい料理を食べてみたい。

 明日はもっと頑張って掘ってみるつもりだ。

 

 私は地上に戻った。首なし死体は何も語りはしない。

 私は死体を引き摺って穴に突っ込み、瓦礫で蓋をして廃墟の町を後にした。

 

 

  第八十九番 検閲

 

 日本も××××並みに××が進んできまして、あらゆるメディアに××が施されるようになりました。インターネットなどはアップロードしたファイルが自動的に××されてしまいます。電子メールも同じです。こんな××は××ていると思いますがそんなことを主張すると××によって××されてしまうのでしょう。

 私は××を受けてもきちんと読者に××が××るような文章を書こうと努力してきました。しかし××の××は×しくなるばかりです。今や形になる文章は××をなさなくなりました。そこで私は考えたのです。そうです。テレパシーです。テレパシーで文章を伝えればいいのです。テレパシーならどんなことを××しても××を×れることが出来るのです。私は×の×で小説を書いてテレパシーで世界に発信するのです。どうだ、×××みろ、××め。この糞××め。俺はテレパシー小説でノーベル文学賞を獲ってやる。俺はテレパシーで××を起こしてやるのだ。テレパシー万歳。

 だから××××××××××××。×××は××××××××××だ。皆×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××ね。でも×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××。あ、電波が××××××××××××××××何を×××××××××××××××××××やめ××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××ョーン。

 ×。

 

 

  第九十番 自殺でGo

 

 男は機関銃を抱えて街へ出た。ベルト式弾倉を体に巻いて。

「自殺だ自殺だー」

 男は楽しげに唱えながら乱射した。機関銃弾を食らって通行人が吹っ飛んでいく。

「自殺だ自殺だー」

 通行人の腕が飛ぶ足が飛ぶ首が飛ぶ。腹が弾けて内臓がこぼれる。逃げ惑う通行人の悲鳴。男は笑っていた。

「自殺だ自殺だー」

 三百人近くを殺した頃、機関銃の弾薬も尽きた。男は拳銃を取り出して自分のこめかみに向けた。

「自殺だ自殺だー」

 男の手が震え出した。男は引き金を引くことが出来なかった。

「自殺だ、自殺だ……」

 男はどうしても自分を撃てなかった。男は泣き始めた。

「自殺……自殺……うう……」

 男はビルの屋上から飛び降りようとしたがどうしても出来なかった。今度は木の枝にロープをかけて首を吊ろうとした。それでも男は決行することが出来なかった。パトカーが来たので男は必死に逃げた。別の都市でまた大量の弾薬を買い揃え、また乱射を始めた。

「自殺だ自殺だー」

 男は、そんなことを既に五百回も繰り返している。

 

 

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