サンタさんはぜったいいるんだ。
クラスのみんなはいないって言ったけど、ぼくはしんじない。だってきょねんのクリスマスも、サンタさんはプレゼントをおいていってくれたもの。くつ下の中に、ほしかったゲームソフトが入ってた。
「ねえ、サンタさんはぼくのところにも、ぜったいきてくれるよね」
ぼくがきいたらお父さんは、にっこりとわらってうなずいたよ。
「ああ、ぜったいにくるさ。だけどサンタさんはおまえがねむってるあいだにくるんだから、はやくねなさい」
だからぼくはへやのでんきをオレンジにして、いそいでおふとんに入って目をつぶった。
ああ、ことしのプレゼントはなんだろう。それをかんがえるとドキドキして、なかなかねむれない。おきてたらサンタさんはきてくれないんだ。そうおもったらますますねむれなくなってしまう。
どのくらいじかんがたったんだろう。お父さんとお母さんはまだおきてるみたいで、となりのへやからテレビの音がきこえてた。
「な、なんだねきみはっ」
いきなりお父さんの大きなこえがきこえてきた。そのあとすぐに、すごいひめいになった。
「た、たすけて、おねがい。おかねなら出すからいのちだけは……」
お母さんのこえがきこえた。なんだかないてるみたいだった。またひめいがきこえた。お母さんのひめいなんだろうか。
となりのへやがしずかになった。なんだかゴソゴソと、だれかが戸だなをあさってるみたいな音がしていた。
なんだろう。ぼくはおふとんからかおを出して、じっとようすをうかがっていた。
キィィィィ、と、ぼくのへやのドアがあいて、光がさしこんできた。
へんなかっこうをした人が、そこに立っていた。
その人は大きなふくろをせおっていて、中ににもつが入ってるみたいでデコボコしていた。その人はまっかなふくをきていた。なんだかふくからあかい水がポタポタとおちてた。
「サンタさんですか」
ワクワクしながら、ぼくはきいてみた。クリスマスの夜に、まっかなふくでふくろをせおってるんだから、サンタさんにちがいない。
「そうだよ」
サンタさんはこたえてくれた。サンタさんはぼうしとおひげのかわりに、あたまからすっぽりとスキーのマスクをかぶってた。
「プレゼントをあげるから、こっちにおいで」
サンタさんがぼくに手まねきした。その右手でほそながいものがキラリと光った。サンタさんってほうちょうもってたっけ。
「わーい」
ぼくはおふとんをとびだして、サンタさんにむかってはしった。サンタさんが右うでをふりあげた。